のう胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS) だ!言われた。 と多くの方が心配していらっしゃいますが、「多嚢胞性卵巣」は多くの女性にみられ、それほど特別なことではありません。 

(よくわかっていないときに見た目からその名前がついてしまって、怖い病気のようですが、そうではありません。)


昔からその存在は知られていたのですが、経膣超音波検査が普及するに伴い、月経不順な方の大多数がこれによるらしいということがわかってきました。

症候群(シンドローム)っていうのは(私の理解によれば) いくつかの症状がまとまって現れることがあって、何か関連があるらしいけど、まだよくわかっていない(!!)ってことです。



PCOS でまとまって起きる症状としては

月経不順で 超音波検査で卵巣に小さなのう胞(それぞれ卵子が入っている卵胞なんですが)がいくつも見える」     です。人によって程度の差がかなりあります。


どの程度の方をどのように診断するかについて、いろいろな診断基準があります。(偉い先生たちのあいだでも意見がまとまりません。やっぱりよくわかっていないんです)(いくつかのタイプが混在していると考えている人もいますが、そのタイプ分けもまだ意見がまとまっていません)



今のところロッテルダム2003 の診断基準」といって、2003年にロッテルダム(オランダらしいです。で行われた専門家会議で提唱されたものが世界的に通用しています。


それは。。。
1.
 稀発排卵 or 無排卵 (順調には排卵しない)
2.
 臨床的 and/or 検査で 高アンドロゲンの所見 (男性ホルモン作用が強い。.ニキビが          多いとか体毛が濃いとか)
3.
 多嚢胞性卵巣所見 超音波検査で卵巣の中に29mmの小卵胞が12個以上見える and/or 卵巣体積が10ml以上)
上記3つのうち少なくとも2つがあった場合PCOSと診断する........というものです。




ただし、日本を含む東アジアと、それ以外ではPCOSの種類が違うと考える先生たちも多く、

日本産科婦人科学会による診断基準(2007)では


以下の1から3すべてを満たす場合を多囊胞性卵巣症候群とする

1. 月経異常

2. 多囊胞卵巣

3. 血中男性ホルモン高値またはLH基礎値高値かつFSH基礎値正常


1)月経異常は,無月経·希発月経,無排卵周期症のいずれかとする.

  2)多囊胞卵巣は、超音波断層検査で両側卵巣に多数の小卵胞がみられ,少なくとも一方の卵巣で2~9mmの小卵胞が10個以上存在するものとする

  3)内分泌検査は排卵誘発薬や女性ホルモン薬を投与していない時期に1cm以上の卵胞が存在しないことを確認の上で行う. また,月経または消退出血から10日目までの時期は高LHの検出率が低いことに留意する

  4)男性ホルモン高値は、テストステロン,遊離テストステロンまたはアンドロステンジオンのいずれかを用い各測定系の正常範囲上限を超えるものとする

  5) LH高値の判定は,スパック-Sによる測定の場合はLH>=7 IUmL(正常女性の平均値+1 ×標準偏差)かつLH>=FSHとし肥満例(BM>=25)ではLH>=FSHのみでも可とする. その他の測定系による場合はスパック-Sとの相関を考慮して判定する

  6)クッシング症候群,副腎酵素異常,体重減少性無月経の回復期など.本症候群と類似の病態を示すものを除外する


となっています。スパック-Sって、なんだよって話ですよね??




治療指針として、日本産科婦人科学会では




ということになっています。


OCとはピルのこと


黄体ホルモン療法っていうのは(排卵しないと卵巣から黄体ホルモンが出ないので、それを外から補充して生理を起こす方法。(排卵はしません、かといって、排卵を抑えるわけでもないので避妊にもなりません。自然に卵胞ホルモンが分泌されていて子宮内膜がある程度厚くなっていれば、生理を起こすことができます)


Kaufmann療法っていうのは(卵胞ホルモンの分泌量が少なくて子宮内膜(赤ちゃんのベッドなどと呼ばれますが)が厚くならないと黄体ホルモン療法だけでは生理が起きないので)ピルよりも弱めなホルモン剤で内膜を厚くしてから生理を起こすものです。(避妊にはなりませんが、もともと排卵しない方たちへの対策なもので)


BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)


ドーパミンアゴニスト:以前はパーロデルでしたが、最近はカベルゴリンが使われます。

血糖値を下げるホルモンのインスリンが効きづらいことをインスリン抵抗性があるといいます。(体重の多い方の)多のう胞性卵巣とインスリン抵抗性に関係があるかもと考えられています。


CCはクロミフェン(クロミッド)のこと、排卵誘発剤です。

メトホルミンというのはメトグルコのこと


FSHは卵胞刺激ホルモン(の注射)


LODというのは腹腔鏡下に卵巣に電気メスで穴をいくつも開ける手術のこと


ARTというのは体外受精などのことです。


最近米国産婦人科学会PCOについて以下のコメント掲載されていました


推奨と結論

1,以下に示す推奨と結論は,科学的証明に基づいている (レベルA)(常に正しい・強く勧める)


·食事療法とともになされる運動量の増加は糖尿病リスクを薬剤療法と同等あるいはそれ以上に低下させる

·インスリン感受性を高める薬剤によりもたらされるインスリン感受性の増大は,循環血中のアンドロゲン濃度を低下させ,排卵の割合を改善し,耐糖能を改善する

·PCOSの女性に対しての排卵誘発のための薬剤使用は,第一にレトロゾール(letrozole)を使用することを考慮すべきである。 その理由は, クロミフェンを使用した場合に比較して, レトロゾール使用時の生産児数がより多数であることによる



2,以下の推奨と結論は,限定された,また必ずしも恒常的でない科学的証拠に基づく(レベルB)(たぶん正しい・勧める)


·PCOSの診断をもつ女性に対しては 75 g糖負荷および2時間値血糖により2型糖尿病および耐糖能障害のスクリーニングを行う

·PCOSのある女性に対しては,BMI,空腹時脂質 および リポプロテイン値によりmetabolic syndrome risk factorsをみる

·体重の減少は妊娠率の改善,多毛症の減少,耐糖能の改善,脂質の改善を伴う

·メトホルミンにさらにクロミフェンを加えることにより,妊娠率は改善するが,その改善は特にPCOSのある肥満女性においてより著しい

·クロミフェンまたはレトロゾールを使用しても妊娠に至らないときには,第二の手段として,外部からの(薬剤の)ゴナドトロピンの使用, または腹腔鏡による卵巣手術を試みる



3,以下の推奨と結論は基本的にはコンセンサスとエキスパートの意見にその基礎を持つ(レベルC)

(=偉い先生たちはこう考えている)


·エストロゲンとプロゲステロンの組み合わせによる低用量ピルの使用は,長期的な管理のために多く使用され、月経障害の一時的な治療に使用される. これは月経に問題のあるときの第一選択(主要な)治療法である

·先天性副腎増殖症およびPCOSの診断が疑われる一群の女性には17-hydroxyprogesterone値を調べる.

·PCOSのある女性にゴナドトロピン(hMGとかFSHの注射のこと)を使用するときには,低用量で使用する

·PCOSによる多毛症に対する主要な治療法は明瞭ではない


レベルAっていうのは はっきりと証明されていることで、B→Cとなるにつれて怪しくなってきます。


体重が多めの方は日々の食事に気をつけて減量、そして運動しましょう。

太ってないのに多嚢胞性卵巣という、日本に多いタイプの方には挙児希望の場合の排卵誘発以外にこれといったお勧めが無いのが現状です。(漢方で排卵しやすくなる・排卵する方もいますが、残念ながら「治せる」わけではありません)




2020.10.15