体外受精治療を受けられるかたへ
ときざわレディスクリニック
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体外受精とは、卵管性不妊、男性不妊、原因不明不妊に対して用いられる治療法です。
はじめは手術で卵管を取ってしまった人、卵管の通過が認められない人などに行われていましたが、体外で受精させることで、精子と卵子が出会って受精したかどうか、また数日間の成長具合をみることができます。 精子の状態が悪くて(やっぱり)受精しないということもありますし、精液検査では異常がないのに、いざ精子と卵子を出会わせてみたら受精しない、「受精障害」という状態があることも見つかりました。 そして、卵子が体外にありますので、うまく受精が起きない場合には顕微授精をすることもできる様になりました。
卵管が通っていない人にはこれしかない治療法ですし、精子の調子が悪いときには受精するかどうかを知ることもできます。(精液検査では異常が見つからなくてもう)受精障害がみつかるかもしれません。(その場合には無駄な人工授精などを繰り返して貴重な時間を浪費しないですみます。)
また、検査で異常がないのにお子さんができない不妊のほとんどは(排卵された)卵子が卵管にうまく取り込まれないせいだといわれています。体外受精では精子と卵子を確実に出会わせることができる為、そこの部分の不確実性が減ります。
体外受精に至る道筋は人によって違いますが、今までの治療の延長線上にあるとお考えください。
特別な治療なしで妊娠する人たちが多い世の中、健康保険がききませんが、(助成金が出るようにはなりました)体外受精はもう30年以上の歴史を持ちます。日本では2014年までにこの方法で43万1626人がこの世に生を受けました。2014年には日本で誕生した子供の4.5%が体外受精関連の技術の助けを受けています。およそ20人に1人、体外受精は特別なものではないのです。
当院では2015年には237件の採卵を行い、解凍を含めた胚移植は合計269件、86人が体外受精・顕微授精で妊娠なさいました。(新鮮胚移植は147件、妊娠38人。解凍胚移植は122件、妊娠48人)201件が単一胚移植で、妊娠は69人でした。
2014年国内では23万1285回の採卵が行われ、凍結胚の解凍移植も含め22万5718回の胚移植が行なわれ、妊娠は6万6529人でした(移植あたり29.5%)
体外受精以前には原因不明不妊に対して、排卵誘発剤を使って、多数の卵子を排卵させることが試みられていました。妊娠は確かに得られることがあるのですが、双子、三つ子、そしてそれ以上などの多胎が問題になりました。多胎はお子さんにもお母さんにも健康上の大きな問題となるのですが、体外受精では子宮に戻す胚の数を制限することができ、多胎となる可能性を減らすことができます。
体外受精でできたお子さんは初めての成功例、ルイーズさんがまだ38歳です。ルイーズさんにはお子さんができましたが、この方法でできたお子さんたちが何か変わったことがないかを現在もそして将来も調査が続きます。
体外受精でどんなことをするかというと、
1. 卵子をとって (採卵)
2. 精子と出会わせて (媒精)
3. 命が始まったらそーっと子宮内にもどす (胚移植)
(卵子と精子が一つになって命が始まったものを「胚」といいます。)
ということをします。
体外受精治療の全体的な流れ
(できれば。。で結構ですが)受診の際に今までかかっていた病院から紹介状をもらってきてください。
追加して必要と思われる検査があればそれをおこなってから、ご希望の月経周期に治療の予定をたてましょう。
まず、「なぜ体外受精なのか?」という質問にお答えしなければならないでしょう。
体外受精治療の一番の目的は妊娠ですが、体外受精の利点は
「精子と卵子を確実に出会わせることができる。」ということです。(そして受精を確認、または手助けをすることもできます。)
「卵子と精子は出会ってるんじゃないの? 排卵にあわせてセックスしたり人工授精をしているし、卵管は通っているし?」と不思議に思う方が多いと思います。
「検査では異常がないのに人工授精をしても妊娠しない」、実はそのような方はかなり多いのですが、実際にそのような方に体外受精をすると卵管が通っていない人と同じぐらいの確率で妊娠するということがわかりました。そしてこのことから逆に、卵管は通っているだけでは充分ではないということがわかってきたのです。
卵管の先の方の卵管采という部分が「卵子をキャッチする」とされているのですが(卵子が自動的に卵管内に入るのではないのです)この大切な働きがクラミジア感染や内膜症などによって、あるいは年齢によって(失礼! 32才頃からと言われています)、働きが悪くなっていると、妊娠する確率が低くなるといわれています。
「卵管が通っていて排卵があり、そしてタイミング良く性交や人工授精が行なわれる」だけでは、(排卵の頃に精子は卵管膨大部に到達しているかもしれませんが、)卵子が精子との出会いの場所、卵管膨大部に取り込まれているか、ひいては「精子と出会っているか」はわからないのです。
また、精子の数や運動率に心配がある方は、(普通だったら卵管の中で行なわれて外からは知ることができない)精子と卵子が実際に出会って受精が起きるかどうか(受精させる力があるかどうか)を確認することができます。
どうしても妊娠しないので体外受精をしてみたところ、受精障害(精子と卵子は異常がなさそうなのだが、精子と卵子を出会わせてみても受精しないこと)がわかって、顕微受精でお子さんを授かったという方も多くいらっしゃいます。
つまり、体外受精治療の候補となるのは、お子さんをお望みの方で
1.卵管が通っていない方 (卵管因子)
2.クラミジアや内膜症などにより卵管が卵子を拾いづらいと思われる方で、他の不妊治療が奏効しない方
3.旦那さんの精子の検査値が悪く、不妊原因が受精が起きていないためと強く疑われる方(男性因子)
4.原因不明不妊で、他の不妊治療が奏効しない方
などがあげられるでしょう。
→卵管が通っていない人は卵管鏡により卵管を通過させることができるかもしれません。
→クラミジアや内膜症で卵管の周りがくっついている方は腹腔鏡により改善を図ることができるかもしれません。
体外受精治療を考える原因因子
当院には日本不妊カウンセリング学会認定のカウンセラーがおりますので、体外受精実施前にはご相談されることをお勧めします。
そんなことで、体外受精の良い点は精子と卵子を確実に出会わせることができると言うことですが、もちろん良くないこともあります。
1.卵子を得るために針を刺さなければならない。
2.卵子を複数個得るために排卵誘発をかけるが、予定通りに行かないことがある。
3.お金がかかる
4.妊娠率は高いといっても50%にも達しない
などです。
卵子をとるためには膣から超音波をみながら針を刺しますが、ばい菌が入るかもしれない、出血が多くなるかもしれないなどの可能性があります。
よく消毒をして、抗生物質も使って、超音波で血管に注意しながら針を刺しますが、どうしてもそのような危険をゼロにすることはできません。採卵に伴う出血を止めるためにおなかを開けなければならなかったという報告も国内にあります。(報告があると言うことは「珍しい」、から報告されるわけで、あまりあることではないのですが。。)ばい菌が入ることは100回に1回ぐらい起こるとされています。当院では年間200回以上採卵するのですが、年間1〜2人採卵のあと熱がでたりすることがあります。運悪くそうなってしまった場合には抗生物質の点滴を何日かすることになるかもしれません。
採卵のイメージ
普通の生理周期に排卵される卵子は1個です。1個の卵子で体外受精をしてもいいのですが、妊娠率があまりよくありません。精子に動かない精子がいたりするのと同様に、卵子にも子供になる卵子とならない卵子があるようなのです。そのため、1治療周期で5個程度の卵子を得ることを目標として、排卵誘発をします。排卵しそうな卵子が多くなると今度は未熟なうちに排卵してしまうことがあり、これを抑える為の点鼻薬(GnRHアゴニスト)や、注射(GnRHアンタゴニスト)、(場合によってはクロミッド)を併用します。しかしながら、排卵誘発剤への反応は人によってかなり違います。途中超音波をみて量を増減しますが、採卵予定が何日か早くなったり遅くなったりするかもしれませんし、場合によっては反応が良すぎたり、悪すぎたりして、キャンセルになることもあります。
体外受精治療には現在のところ健康保険がききません。採卵の日に18万円(顕微授精はプラス5万円)、胚移植の日に5万円いただいています。良好な胚が残っている場合には、凍結保存料として5万円を採卵1週間後のホルモン検査の日にいただいています。(凍結保存胚の解凍移植には5万円、凍結保存延長料は1年間1万円)(税別です)
また、使ったお薬、診察料などはその都度実費をいただいています。
2015年当院での体外受精(顕微授精)胚移植での妊娠は269回胚移植をして86人(32.0%)です。妊娠率は女性の年齢にかなり影響されます。年齢別のデータは緑色のファイルに入れて当院外来待合いにおいてありますのでご覧ください。
体外受精の予約は月、水、金曜日を採卵の予定日としています。もっといっぱい予定が入ればいいのですが、お部屋や培養器の都合からこのような状態になっています。申し訳ありません。
*受精・顕微授精について
通常の体外受精というのはとれた卵子を培養液に入れておいて、そこに洗浄して濃度を調整した精子を入れます。精子が泳ぎ回って(その中で)幸運で元気な精子が自然に自分の力で卵子に入っていくのを待つ。。。のですが、 精子と卵子を出会わせても受精が起きない場合(あるいは精子の状態などから受精が起きないだろうと強く疑われる場合)、細いガラスの針を使って精子を卵子に注入して授精させることがあります。これを顕微授精といいます。卵子に針を刺しますので、通常の体外受精よりも更に人工的な過程が加わります。 通常の妊娠よりも流産率・奇形率が多少高いかもしれないといわれていますが、その原因が卵子に針を刺すためなのか、(顕微授精をしなければならない)精子のせいなのかはわかっていません。 (顕微授精が通常の体外受精と違うのは授精の部分だけです。) また、お二人の精子と卵子を使いますので、お二人に似たお子さんができるわけですが、精子が少ないなどの不妊の原因が遺伝子にある場合にはそれも受け継ぐ可能性があります。
精子に卵子を受精させる力があるかどうか、 (奥様の卵子を授精させ、つまりは子供を作ることができるか)を前もって知るというのは難しく、また実際にその日の状態によって同じ夫婦でも卵子が受精したりしなかったりすることも知られています。
体外受精の目的の一つとして「お二人の卵子と精子で実際に受精が起きるかどうか」を確認するということがあるのですが、かといっていろいろな手間とお金をかけて行う1周期の体外受精が受精ゼロで全滅するのはあまりにも悲しいことです。「精子の運動がほとんど無い」とか、「精子濃度が基準値の10分の1以下」とかの場合には初回から全部の卵子を顕微授精することをお勧めしますが、そうでない場合には 卵子が何個か取れれば、いくつかは通常の体外受精で受精するかを確認し、残りのいくつかの卵子は、(通常の体外受精で受精しなかったときのことを考えて)顕微授精にするということもできます。もちろん通常の体外受精をした卵子がうまくいったときにはそちらを優先して胚移植します。どちらで何個ということはご相談させていただきます。
さて実際にどんなことをするか、というと。。。
当院には日本不妊カウンセリング学会認定のカウンセラーがおりますので、顕微授精実施前にカウンセリングを受けていただきます。
顕微授精の治療周期に入る前に「胚移植の時に使う柔らかいシリコンチューブが子宮にスムーズに入るか」と、「貧血や肝機能の異常がないか」、そして「精子の状態」を見ておきます。(旦那さんの肝炎等の感染症の検査もしましょう。顕微授精する際に精子は洗浄しますが、もし旦那さんが肝炎等を持っているとそのウィルスが奥様、そしてお子さんにうつる可能性があります。。。)
検査に異常がなければ、生理周期や、ご都合等を考えあわせて採卵の目標日をきめます。(採卵の日には旦那さんにも午前中お休みいただいて来て頂きたいと思っています。)この採卵予定日から逆算して、注射を始める日、薬をのみ始める日等を決定します。
体外受精のための排卵誘発法はいくつかあります。点鼻薬を使う方法は中途半端な排卵をしっかり抑えてくれるのですが、卵巣の反応が悪い人はますます悪く、反応のよろしい人は逆に過剰反応を起こすことがあるとされています。
最近では刺激前の抗ミュラー管ホルモンの結果でどの方法がよいか選ぶようになりました。
ロング法と呼ばれる方法では、注射を始める前の生理が来る更に1週間ぐらい前から点鼻薬を使いはじめます。(顕微授精の前の周期から避妊をお願いします)(スプレキュアなら一日2回左右の鼻腔に1回ずつ、ナファレリールなら1日2回片方の鼻だけに)そして、採卵予定日から逆算した日からhMGの注射を開始します。途中超音波を見ながら注射量を調節します。(日曜祝祭日も午前は10時から12時まで、夕方は火、木、土、日祝祭日と6時半から7時半にも注射の予約をお受けしています)なお、超音波を見ない日の注射は、お近くの医療機関にお願いすることもできます。
→卵巣刺激の反応が十分でなかったり、過剰だった場合には、採卵をキャンセルさせていただく場合があります。 ショート法と呼ばれる方法では、お薬を飲み準備をして、それで来た生理の1-2日目から点鼻薬を使いはじめ、(採卵までの期間によっては、違う薬をのんで、生理がもう1度は来ないことがあります)3-4日目から注射をはじめます。
ロング法の一例です。
アンタゴニスト法では、(GnRHアンタゴニストという注射薬を使います〜うちで使っているのはセトロタイドという薬です)お薬を飲み準備をして、採卵予定から逆算した日より毎日注射をします。途中卵胞の大きさ、必要に応じて血液検査をして、排卵が近いと判断されたら今までの注射に加えて、アンタゴニストという中途半端に排卵をしないようにする注射が始まります。アンタゴニストは27時間ぐらいしか効かないので、だいたい同じ時間にうつ必要があります。夕方がお勧めですが、夕方でなければいけないわけではありません。(アンタゴニストが始まると、今までうっていたhMGの注射を増量します)
アンタゴニスト法の一例
加藤法(クロミッド併用法)では、お薬を飲み準備をして、採卵予定から逆算した日よりクロミッドという飲み薬の排卵誘発剤を使い、注射を8,10,12日目ぐらいにします。注射が少ないので、来院も楽ですし、体や卵巣への負担も軽いとされていますが、採卵できる卵子の数は少なめになり、また、排卵を押さえる力が弱いために、排卵してしまって卵子がとれないことが10-20%あるとされています。なるべくそのような事態を避けるためにホルモンの検査などをしますが、避けきれるわけではありません。
寺元法(クロミッド併用変法)では、基本的には加藤法と同じでクロミッドという飲み薬を使いますが、排卵誘発剤の注射を(クロミッドの4日目より)毎日します。注射を多くすることで加藤法に比べてとれる卵子の数が多めになることを期待します。
採卵2日前
卵胞が十分に発育したと判断されたら、hMGの注射と中途半端に排卵しないように抑える薬(点鼻薬など)はおしまいになり、(点鼻薬はこの注射の日の朝まで使います→)夜8時頃にhCGの注射を行います。(ゴナトロピンという名前かもしれません)(排卵と卵の成熟のタイミングをとる注射です。)2日後が採卵の予定になります。旦那さんのご都合を再確認して下さい。(体外受精には精子も必要です。→精液だけ奥さんにもってきてもらってもいいのですが、ときおり(その日だけ)精子が極端に少ないことがあります。そのようなときは追加の精子をお願いすることがありますので、できれば旦那さんにも来院していただきたいと思います。)
採卵当日
朝起きてから一切飲んだり食べたりしないで、朝8時ちょっと前(または9時前かもしれません)においでください。
旦那さんにも来て頂きたいのですが、まずはおうちで精液をとってきて下さい。(精液所見が不良な場合はこちらに来てから再度採取をお願いする場合があります。)
採卵は午前8時〜10時ごろに概ね30分位で終了します。抗生物資の点滴をしながら、超音波ガイド下に卵胞を確認しながら針を刺して、卵胞の中の卵子を取ります。(すべての卵胞から必ず卵子が1つずつとれるわけではありません)
麻酔をかけておこないます。点滴から眠り薬を入れて採卵する方法と、局所麻酔でする方法があります。局所麻酔の良いところは何をしているかわかるところなのですが、ちょっと痛いかもしれないのと、何をしているかわかるのがいやという方もいらっしゃいます。また、卵巣が子宮の向こう側にあったりして、局所麻酔だけでは痛そうな場合は、眠り薬で採卵する方法をお勧めしています。術後はふらふらしますのでしばらく休んでから帰っていただきます。なお、当日 自動車の運転などはなさらないで下さい。また当日はお風呂でなく、シャワーにして下さい。
(感染予防のために抗生剤がでます。)
採卵の2日後(日曜祝日の場合は次の日にお願いします。)
午前中に電話して、受精卵〜胚の様子をお尋ね下さい。
理想的な卵子/胚の分割/成長
2つ以上の良好胚がある場合はまだ胚を戻さずに培養を続けます。多くの場合、採卵5日後まで待ち胚盤胞で戻しますが、5日目でなければいけないわけではありません。なぜ待つのかというと、どの胚が一番子供になりそうかなるべく長く様子を見るというのが目的です。良好胚が1つしかない場合には、5日目まで待ってもその1つを戻すかどうかだけで、特に待つ意味はありません。(胚培養の途中で成長が止まるかもしれないので、待つことも多いですが、)早く子宮に戻した方が妊娠率が良かったという研究もあり(!)どちらが正しいかは難しい問題です。どちらにするか相談しましょう。
胚移植(採卵御5日目のことが多いですが、上記の状況によります)
胚移植の時は膀胱に尿を貯めて、内診のときのような体勢をとっていただき、子宮の入り口から細い柔らかなチューブで子宮の中に胚を戻します。このとき、チューブの位置を確認するためにお腹の上から超音波をみますが、膀胱に尿が貯まっていないとよく見えません。条件がよければ胚移植自体はすぐに終了します。麻酔は使用しません。移植後ちょっとだけ安静にします。
多胎を防ぐため胚移植は原則1個とさせていただいています。(日本産科婦人科学会の決まりで原則1個、女性が35才以上の場合と、前2回不成功の場合にのみ2つまでとなっております)
→良好胚が残っていれば凍結保存することをお勧めしますが、凍結保存を御希望でない方はお申し出ください。(詳しくは凍結保存の説明書をご覧ください)→尚、卵巣が腫れすぎている場合や、内膜の状態が悪い場合は、1つも戻さないで良い胚を全部凍結することがあります。
(「全胚凍結」と呼ばれます)
凍結保存・解凍した胚は、新鮮胚移植(というのは採卵後数日で戻すことを言います)に比べ、妊娠率はほとんど変わりません。また奇形などの発生率はあがらないとされています。(詳しくは凍結保存の説明書をお読みください)(胚凍結保存は未だ100%完全な手技ではなく、すべてがうまくいったときにかなり元通りに回復できるというもので、元通りに回復しない胚も存在します。)
胚移植のイメージ
採卵の次の日より判定日まで、妊娠を助けるため毎日黄体ホルモンの飲み薬を、または膣座薬を使っていただきます。(膣座薬は、使う前にパッケージごと握って暖めていただくと、表面が溶けて入れやすくなります。おうちにあるサラダ油などを使っていただいても、薬局に売っている潤滑剤を使っていただいても大丈夫です。
→注射もあります。黄体ホルモンの注射を毎日することもありますし、卵巣の様子を見ながら卵巣から黄体ホルモンをださせるような注射をすることもあります。
採卵の約1週間後
黄体ホルモンが足りているか採血をします。午前中にいらっしゃれば夕方には、夕方にいらっしゃれば翌朝までには結果が出ます。結果はお電話でお伝えできます。(黄体ホルモンが少なければ、注射をします。)
判定
採卵の2週間プラス2〜3日後に妊娠判定を行います。
当日朝一番の尿をお持ちください(容器をお渡します)
○判定が陽性の場合(妊娠したとき)
黄体ホルモンの薬を続けます。約1週間後に超音波をみて、胎嚢の位置や数を確認します。また、反応は陽性でも流産に終ったり子宮外妊娠になる場合もありますので、しばらくの間は1週毎位に受診していただきます。
妊娠3カ月で、当院での検診は終了となります。ご紹介元の病院、またはご希望の病院へ紹介状を書きます。
○判定が陰性の場合(妊娠しなかったとき)
1.凍結胚がある場合
ア)ホルモン補充周期での解凍胚移植 生理中から貼り薬などのお薬を使って、子宮内膜を整えて、内膜が充分に成長したら黄体ホルモンの薬を併用して戻します。妊娠したときにはしばらく(2ヶ月ぐらい)の間、薬を使い続けます。(この方法は欧米で人から卵子をもらう人のために考え出されて行なわれている方法です)良いことは胚移植の日の予定があらかじめ立つということです。
イ)自然周期での解凍胚移植 排卵日がはっきりとわかることが必要で、超音波をみたり尿検査をしたり、血液検査をしたりして排卵日を探り当てます。ときおり排卵日を見逃してしまったり、戻すはずの日が連休に当たって戻せなかったりします。
採卵をした次の周期は排卵を突き止めるのがかなり難しいので採卵の翌々月からにしています。
(自然)排卵の少し前においでください。
2.凍結胚がない場合
最低2ヶ月はお休みして、そのあとはまたご希望の周期に次の治療をはじめます。
成績
当院では2015年には237件の採卵を行い、解凍を含めた胚移植は合計269件、86人が体外受精・顕微授精で妊娠なさいました。(新鮮胚移植は147件、妊娠38人。解凍胚移植は122件、妊娠48人)201件が単一胚移植で、妊娠は69人でした。
費用
体外受精治療には現在のところ健康保険がききません。採卵の日に18万円、胚移植の日に5万円いただいています。良好な胚が残っている場合には、凍結保存料として5万円を採卵1週間後のホルモン検査の日にいただいています。(凍結保存胚の解凍移植には5.4万円、凍結保存延長料は1年間1万円、税別です)
また、使ったお薬、診察料などはその都度実費をいただいています。
(別紙をご覧ください。)
ロング法でスプレキュアを使って、注射がhMG150単位10日間、卵子が5つとれて、胚凍結がなくて、5日後に胚移植をするというケースですと、1周期の費用が267900円になります.(胚凍結が加われば、317900円になります)
アンタゴニスト法で注射がhMG150単位連日、卵子が7つとれて、セトロタイドを3回、胚凍結がなくて、5日後に胚移植をするというケースですと、1周期あたりの費用は270400円になります.(胚凍結が加われば、320700円になります)(税別です)
「夫婦合算の前年所得(1月から5月までは前々年の所得)の合計額が、730万円未満の方」に(「所得」とは収入からいろいろな控除を引いた後の金額のことだそうです) 県などから(さいたま市、川越市など1部の大きな市では市が)「特定不妊治療費助成事業」で、助成金が受けられるかもしれません。(年令条件があります)
待合いにパンフレットと申請用紙がおいてあります。詳しくはお住いの役所にお問い合わせください。
大泉町、太田市、伊勢崎市、館林市、みどり市、桐生市、板倉町、邑楽町、明和町、千代田町、玉村町、佐野市などには、県のものとは別に不妊治療に対する助成があります。市町村によって違いますが、所得制限がないことが多いです。
安全性・体外受精・顕微授精 胚移植治療による副作用、リスクには次のようなものがあります。
1.過排卵刺激(排卵誘発)には細心の注意を持って当たらせていただきますが、卵巣の反応によって、キャンセル、全胚凍結保存をお願いする、卵巣過剰刺激がおきるなどの可能性があります。
2.採卵による出血:超音波で見ながら針を刺すのですが、超音波で見えないほど細い血管からでも出血することがあります。出血がひどいときは輸血、開腹しての止血手術が必要になるかも知れません。
3.採卵、胚移植による感染:よく消毒してから行いますが、人間の体を完全に滅菌することはできません。予防のため抗生物質の投与をしています。また旦那様の精液は受精前に洗浄しますが、精液中の細菌やウィルスなどをすべて取り去ることはできません。体外受精によって奥様に感染する可能性があります。ご希望が有れば、旦那様の感染症の検査(梅毒、HIVなど)をしますのでお申し付けください。(通常の性行為でもそのような可能性がありますが、いままでうつらなかったからといって、これからもうつらないというわけではありません。また現在検査できない病気もありえることをご了承ください。)
4.麻酔:血圧低下、呼吸不全などが起こることがあります。
5.卵巣過剰刺激症候群:卵巣の反応が良すぎると卵巣が腫れて腹水や胸水がたまったり血栓症になる可能性があり、重症の場合入院が必要になるかもしれません。
6.多胎妊娠:双子や三つ子が妊娠すると、早産、未熟児、妊娠中毒症等の可能性が高くなります。(1つしか胚を戻さなくても多胎になることがあります)
7.体外受精でも子宮外妊娠が起きることがあります。
8.通常の体外受精ではお子さんに奇形がおきる確率は、自然妊娠とほぼ同等とされています。
もう38年の歴史をもち、世界中で行われていて、日本でも出生児の20人に1人弱がこの方法で誕生していますが、なにぶん人間相手なので、実験ができません。現在までのところ大きな問題はないと考えられていますが、引き続き誕生した児のその後を調査しています。
9.培精培養には細心の注意を持って当たらせていただきますが、不慮の事故等により、継続不能になった場合には、ご容赦ください。
10.お二人の精子と卵子を使いますので、お二人の遺伝子を受け継いだお子さんができます。精子が少ないなどの不妊の原因が遺伝子にある場合にはそれも受け継ぐ可能性があります。
代替え手段
卵管閉塞の方は子宮に近い部分の閉塞であれば、卵管鏡をしてみるという方法があります。これは細い内視鏡を膣から子宮を、そして卵管を通してみるという方法です。
群馬県内では行っているところがありませんので、東京などになりますが、ご紹介いたします。
ご相談ください。
内膜症による不妊が強く疑われる方は腹腔鏡で内膜症を改善させることができるかもしれません。 太田記念病院などで、手術を行っています。ご紹介いたしますのでご相談ください。
胚移植の個数・単一胚移植
多胎を防ぐため胚移植は原則1個とさせていただいています。(日本産科婦人科学会の決まりで原則1個、女性が35才以上の場合と、前2回不成功の場合にのみ2つまでとなっております)
カウンセリングの機会の提供
当院には日本不妊カウンセリング学会認定のカウンセラーがおりますので、体外受精治療実施前にカウンセリングを受けていただきます。そのほかいつでも受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
日本産科婦人科学会への報告の義務と、成績の発表や学会への報告の際の個人情報の保護
個人情報保護について 該当する皆様が県などの特定不妊治療費助成を受けるために日本産科婦人科学会に報告をしなければなりません。(これは県や市町村からの助成の条件ともなっております)個人のお名前は一切提出いたしませんのでご理解をお願いします。また学会発表などの際にも、個人のお名前は一切出すことはありませんのでご理解をお願いいたします。
*胚凍結保存・解凍胚移植について
体外受精治療には(上記のような)危険が伴います。とくに5の多胎妊娠を避けるためには移植する胚の数を減らす必要があります。しかし良い胚があるのに残りを捨ててしまえば、うまく妊娠しなかったときにはまた1から危険を冒さなければなりません。移植しなかった良い胚を凍結保存しておき、うまく妊娠しなかったときに解凍して戻せば、1から4の危険をほとんど冒すことなくまた妊娠のチャンスがえられます。
また、上記4の卵巣過剰刺激症候群は妊娠するとさらに悪くなることがあるので、これを避けるために得られた胚をすべて一時凍結保存して次の周期以降に解凍して戻す「全胚凍結」を強くお勧めすることがあるかもしれません。
凍結保存・解凍した胚は、新鮮胚移植(というのは採卵後数日で戻すことを言います)に比べ、妊娠率はほとんど変わりません。また奇形の発生などの危険はあがらないとされています。(ただし、胚凍結保存は未だ100%完全な手技ではなく、すべてがうまくいったときにかなり元通りに回復できるというもので、元通りに回復しない胚も存在します。それでもなおこれを行なうのは、上に書いたように今回胚移植しない残りの胚を全部捨ててしまうことや、多数の胚を戻すことよりもいろいろな点で好ましいことだからです。)
凍結胚の保管は1年単位とさせていただきます。この期限を越えて保存の延長を希望される方は保管期限までに追加の保管料をお支払い下さい。期限を越えてお支払いのない場合、または下記の場合には胚を廃棄処分とさせていただきます。
ア 夫婦が離婚したとき。
イ 夫婦の一方が死亡したとき。
ウ 夫婦の一方が廃棄を申出たとき。
エ 生殖年齢を超えたとき。
なお、胚凍結、保存は解凍して移植することを前提にしていますので、もうこれ以上お子さんがいらないという場合はご連絡をお願いします。
また、不慮の事故等により、保存不能になった場合には、当該年度の保管料を払い戻させていただきますが、それ以上の責はご容赦ください。
2017/5/10